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【金融知識】 赤字国債の歴史と無制限発行のカラクリ (その2)

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このとき大蔵大臣(現在でいう財務大臣)であった大平正芳は、もちろん赤字国債の発行は抑制すべきであること、発行する場合には歯止めをかける方策が必要であると考えていました。そして、特例法による赤字国債の発行は単年度法とすることと、赤字国債は現金償還ルールを原則とすることの2つを無制限発行に対する抑止装置としました。

 

大平蔵相は、この2つの赤字国債の抑止装置によって発行額を抑制しようとしましたが、始めて発行された昭和50年度以降、赤字国債はドンドン増えていきました。このため、大平内閣が成立すると直ちに赤字国債削減に取り組み、財政健全化が大平内閣の最優先課題となりました。大平正芳の赤字国債膨張に対する基本的な視点は、「子孫に膨大な負担を残してはいけない」というものでした。(どっかの成蹊大卒の元ニートに聞かせてやりたい台詞です。)

 

1980年に大平正芳が倒れた後も、赤字国債依存体制の脱却を目指し、昭和57年度(1982)には歳出枠を前年度以下に抑制する「ゼロ・シーリング」が初めて設定されました。加えて翌年の昭和58年度(1983)には「マイナス・シーリング」が設定され,前年度比経常部門マイナス5%を目標とした徹底した経費の見直し・抑制を図られたこととバブル経済の後押しにより、平成2年(1990)ついに赤字国債依存体制から脱却したのです。

 

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 参照(http://blog.goo.ne.jp/teramachi-t/e/ea3a4db7e08d6c10fb1893eba7028721)

 

上のグラフでも分かるように赤字国債の発行実績は平成3年度(1991)から平成5年度(1993)までの3年間ゼロとなりました。ところが、赤字国債依存体制の脱却を目前に
して大平正芳の築いた赤字国債抑止装置は破壊されます。これが赤字国債無制限発行の契機となり、今日の政府債務膨張の元凶といえます。

 

 事の発端は、昭和50年度から発行された赤字国債は,昭和60年に満期償還を迎えることから始まりました。上でも述べたように赤字国債は現金償還が原則に則って、満期を迎える10年債の赤字国債は昭和60年から全額が現金償還されるはずでした。

 

ところが、昭和59年(1984)財政制度審議会は「中期的財政運営に関する諸問題の中間報告」において、赤字国債償還は現金償還のルールを変更して借換償還を行うべきだ、とする答申を行いました。

 

この理由はこれから訪れるであろう少子高齢化社会に向けて政府予算の歳出はますます増大することを懸念してのものでした。これにより、赤字国債現金償還の原則は単なる「努力規定」に変更され、形骸化してしまいました。

 

以後、毎年制定される特例公債法には、この規定が盛り込まれることとなります。この時点で、赤字国債の償還原則は現金償還から借換償還へ根底から変更されたこととなりました。

 

この変更は国家経営において、借金を借金で返す自転車経営を容認したようなもので、国債発行の抑止装置の喪失を意味します。建設国債の場合は発行限度額は、公共事業費の範囲内に限定されており、赤字国債についても現金償還の原則によって発行額は抑制されていました。

 

ところが、建設国債と同様に赤字国債償還も60年償還ルールが適用されると赤字国債の発行は現金償還の制約から解放されます。なぜなら満期が到来しても,現金ではなく借換で償還を行うことができるからです。赤字国債と建設国債は一蓮托生の関係にあり、建設国債の発行限度額を超えて発行される国債が赤字国債だからです。

 

そして、これは赤字国債の借換償還は国債無制限発行に繋がっていきます。上でも述べたように昭和50年代後半以降国債行額が減額していくのは、「ゼロ・シーリング」や「マイナス・シーリング」によって赤字国債発行に限度が画されていたからでした。

 

国債の借換償還の容認は、国債発行の抑止装置を破壊を意味し、財政規律が失われていくことに繋がります。そしてここから日本の国家財政は、大平正芳が懸念した赤字国債の無制限発行という泥沼に足を突っ込んでいくこととなります。

 

下のグラフにおいて平成6年(1994)以降ピンクの割合が急激に上昇していくのは、この事実を明瞭に示しています。

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