これまで国債の概要と流通手段をざっくり説明しましたが、今回は発行した国債を引き受ける側に焦点をあてていきたいと思います。
政府が発行した国債は、基本的に市中銀行・証券会社またはそれを通じて個人投資家が購入、つまり消化するということになっています。これまでの国債消化は証券会社などが団体で国債を引き受けるシ団引き受けが主流でした
国債の大量消化・変動金利に対応するため04年に導入されたのがプライマリーディーラー制度です。
プライマリーディーラー制度とは、アメリカにおいて、米国債の入札に参加し、FRBと直接取引ができる証券会社のことをいい、日本においても、2004年10月から日本版プライマリーディーラー制度といえる「国債市場特別参加者制度」が導入されています。
これは、国債の安定消化、国債市場の流動性の維持・向上を図るという目的のために、財務省が一定の責任を果たす市場参加者(要するにデカくて伝統のある金融機関)を特別参加者として指定し、特別参加者会合への参加や特別参加者向けの入札への参加などの特別の資格を与えるというものです。
ですが、マイナス金利の導入により、国債金利がマイナスとなったことで市中銀行としてはわざわざ政府から国債を買う必要がなくなっている(金利がマイナスということは国債を買えば逆に国に利息を払わなければならないからです)という状態になっており2016年6月三菱UFJがディーラー資格の返上を示唆するなど、国と市中銀行との二人三脚状態は限界を迎えています。景気を押し上げるための政策が国家財政にトドメを指しかねないというジレンマですね。
このように政府財政の急速な悪化による赤字国債の無制限発行、加えてマイナス金利政策によりそれにも翳りが見え始めています。そのためというわけではないですが、国債が市中消化できない場合の最終手段としてあるのが「国債引き受け」というものです。
「国債引き受け」とは、国が新規に発行した国債について、国と中央銀行が市場を介さずに直接取引する(中央銀行が国債を買い受ける)ことをいいます。
ですがこれは理論上、政府が国債を無制限に発行し日銀がその分万札を刷って購入するという無限ループができるため、政府の財政節度を失わせると共に、中央銀行による通貨の増発に歯止めが掛らなくなり、第一次世界大戦後のドイツのような悪性ハイパーインフレの発生につながる可能性があります。なので先進各国では、中央銀行による国債引き受けを制度的に禁止しています。
もちろん日本においても一応、「国債の市中消化の原則」と呼ばれるものがあり、日銀による国債引き受け(日銀引き受け)は、財政法第5条によって原則として禁止されています。ですが、財政法第5条にはジョーカーとして「ただし書き」の部分に、「国会の議決を経た金額の範囲内に限って、国による借換えが可能」と明記されているため日銀による国債引き受けが可能となっています。
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