今回は3つの代表的な株価計算モデルの1つであるDCF法(割引現在価値法)について紹介していきたいと思います。
DCF法はディスカウントキャッシュフロー法といい、企業がこれから生み出す収益(将来のフリーキャッシュフロー)を基準に企業価値とする方法です。
具体的には、将来生み出すであろうフリーキャッシュフローを、一定の割合で現在価値に割り引きます。
ちなみにこの「将来生み出す利益を現在価値に割り引く」という考え方は、企業内においても新規プロジェクトの採用・不採用を決定する際にも使われています。(基本的に投資回収期間が3年以上の案件はDCF法を用いるケースが多いです。)
ちなみにDCF法のイメージはこんな感じです。
参照(http://valuationapp.info/discounted-cash-flow-valuation/)
例えば、100万を銀行に預けるとして、預金の利率が年5%だったと仮定した場合、預けた100万円は1年後には105万円 (= 100万円×1.05) に、2年後には110.25万円 (= 100万円×1.05×1.05) になっています。これを未来からさかのぼって考えると、2年後の110万円は、今の100万円と同価値 (110万円÷1.05÷1.05≒100万円)ということが言えます。(割引現在価値については下のリンクでさらに詳しく解説しています。)
DCF法による企業価値の算定もぼぼ同じような考え方です。というわけでDCF法による企業価値算出の説明に入ります。
大まかな手順は下のようになります。
①:割引率となるWACC(加重平均)の算出
↓
②:将来のフリー・キャッシュフロー(FCF)の予測
↓
③:企業価値の算出
①:WACCの算出
次にWACC(加重平均資本コスト)を算出していきます。資本コストとは、企業が資金を調達するために掛かるコスト(費用)のことで、金額ではなく(%)で表されます。
そして、資本コストは負債資本コストと株主資本コストに分けられ、負債資本コストとは銀行からの借入金や社債などの有利子負債の利子率のことで、株主資本コストは投資家が要求する「期待収益率」を指します。
株主資本コストは、基本的にCAPM理論を使って計算します。
まずはCAPM の公式から株主の資本コストを算出します。
CAPMによる均衡収益率:株主の資本コスト
=(市場全体の収益率-無リスク利子率)×β+無リスク利子率※無リスク利子率=10年もの長期国債の利子率
そして、WACCの公式から加重平均資本コストを算出します。
②:フリー・キャッシュフロー(FCF)の予測
まず将来のフリー・キャッシュフロー予測を行います。フリー・キャッシュフローとは企業が自由に使えるキャッシュのことで、以下の式で計算します。
FCF=
税引き後営業利益+減価償却費-※運転資本増加額-設備投資額
(※)運転資本増加額 = 期末運転資本-期首運転資本
運転資本 = 流動資産-(流動負債-短期借入金)
フリーキャッシュフローの計算は、Excelなどで各数値を表に整理して計算するとやりやすいです。
そして、事業の場合は最終年度まで計算して除却なりで精算して終わり、となりますが、企業は予測期間以後も存続していきます。この場合は予測期間以後のフリーキャッシュフローの割引現在価値を考慮に入れて企業価値を計算しなければなりません。
そこで使われるのが、継続価値(ターミナルバリュー:TV)というです。継続価値は予想年度以降もフリーキャッシュフロー(FCF)が、一定率で永続的に成長するとした場合の残存企業価値を表し、一般的に下のような計算式で定義されています
③:企業価値の算出
というわけで①と②で計算した値を使って企業価値を算出します。
そして、算出された事業価値(企業価値)に、※非事業価値を加え負債総額を差し引き、発行済み株式数で割った値が理論株価となります。
※非事業価値:企業の保有している土地・建物といった固定資産や株券などの金融資産のこと
追記:企業価値についてはコチラの企業価値の神秘という本がとても分かりやすかったので紹介しておきます。
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