「独占」とは何か?
私たちが暮らす資本主義経済の基本的な目的は、モノ・サービスといった資源を最適分配することにあり、そのための市場は基本的に自由競争が望ましいとされています。
しかし、現実においてこの自由競争は成立しなくなることが往々にしてあります。その状態の一つに「独占」というものがあります。「独占」とは、ある企業がその製品の唯一の生産者であり、その企業の製品が、他の代替材をもたない状態のことを指し、この時その製品は独占状態にあると言えます。
独占が発生する理由
独占が発生する原因は大きく3つ存在します。
「資源の独占」
希少な資源や生産要素の支配1つの企業が重要な資源を保有することで独占が発生します。このとき、当該企業は非常に強い市場支配力を発揮し、かなり自由な価格付けを行えます。(例)デビアス社のダイヤモンドなど
「政府による独占」
政府が1人の人間や1社の企業に、排他的な販売権を与えるために独占が生じます。具体的には、政府は特許権や著作権によって、排他的な販売権を保護したりすることで生じます。これはIT産業など国として保護したい・外資に入られたくない分野で起こるものです。
規模の経済による独占
制度などの人為的な要因ではなく経済的な要因によって、規模の経済が働くときに自然に発生する独占を指します。 自動車や酒造産業など初期投資などに掛かる固定費用が大きく、規模の経済性を持つ産業において発生しやすいと言われています。
「独占」の3つの状態
そして市場に独占状態には大きく3つの形が存在しています。それがいわゆる「カルテル」「トラスト」「コンツェルン」というやつです。センター試験の政経分野にも出てくる奴ですね。
「カルテル」
同じか似たような業種の企業が、お互いに競争することを避けるために、企業どうしで協定を結んだり、合意したりすることで、独占禁止法で原則として禁止されていますが、不況カルテルと合理化カルテルについては、公正取引委員会によって認可される場合があります。
「トラスト」
市場を独占するために、同じ業種で、いくつかの企業が資本を合わせること。上のカルテルよりも結合の程度が高い状態を指します。
「コンツェルン」
市場を独占するために、違う産業どうしで、いくつかの企業が資本を合わせることを指します。例としては、金融機関または持ち株会社が株式保有・融資・人的結合などを通じて各種産業部門の独立企業を統括・支配する独占的巨大企業集団、つまり財閥というやつです。これはカルテル・トラストの上位互換と言えます。
「独占・寡占」が引き起こす社会問題
独占がなぜいけないのかというと、もし市場が独占状態になってしまうと、企業間での価格競争がなくなってしまいます。
そうなると何が起こるのかというと、原材料費の高騰などで、値段が上がることはあれども下がることがなくなってしまうのです。(このような動きを、価格の下方硬直性と言います。)
実際に「独占・寡占」が発生している産業では、※「管理価格」になってしまいやすいと言われています。他にも競争相手がいないため、質の悪い製品を市場に出すなど、消費者の足元をみた商売が可能になってしまいます。
※管理価格:商品の価格が市場メカニズムで決定されるのではなく、供給する側がどれほどシェアを持っているかで決めてしまういわゆる「独占価格」などのような、企業が独自に決める価格のことを指します。
これは健全かつ公正な競争を妨害する行為につながり、ひいては我々消費者や立場の弱い小売店などに、大きな不利益をもたらしかねません。
多くの同業他社が存在し、互いに公正な競争を行ってこそ、健全な市場が成り立ち、私たち消費者は日常生活において安定して適正な価格の商品を購入することができるのです。まあ実際のところ、現代の経済で「独占」が生じれば、「独占禁止法」の対象となり、公正取引委員会のもとで独占企業は分割されます。
とはいっても現代の市場において完全に独占がなくなったわけではなく、「独占」よりは少しマイルドな状態である「寡占」(数社で市場を支配している状態)に形態を変えて存在しています。
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