市場は必ずしも完全競争ではなく不完全競争である時があり、一社だけが存在している状態を独占、数社で独占している場合は寡占と言います。(現実においてはビール市場などが寡占に当てはまります。)
不完全市場において、市場が独占の場合は1社しか存在していないので、自社のことだけを考えていれば十分です。ですが、有力な企業が2社存在している複占状態であると、自分のことだけではなく相手のことも経営戦略に考慮する必要が出てきます。
このとき起こるとされているのが今日のテーマである「クールノー均衡」です。「クルーノ均衡」は経済学において超基本の問題なので絶対解けるようにしておきましょう。
「クールノー均衡」とは、互いに相手の生産量を所与として、自己の利潤の最大化をしているような状態のことを言います。つまり、生産量を戦略変数として、互いに最適反応を取り合っている状態です。
複占企業は、独占企業と同じように、価格支配力をもっているので、クルーノ均衡における利潤最大化条件は「限界収入=限界費用」(MR=MC)となります。
例題
ある財の需要関数は価格をpとし、需要量をqとしたとき、q=50-pであらわされるとする。この財の市場には企業1、2しかなく、それそれの費用曲線が
C1=2(X1) +3
C2=5(X2)
と表されるとき、クルーノ均衡における両者の生産量(X1・X2)を求めよ。
解答
<利潤最大化条件で解くとき>
クルーノ均衡を求めるときはX1とX2の関係を表した反応関数を求めて、それを解いてX1とX2の数値を出すことが最終目標となります。
そのための反応関数をどうやって導き出すのかというと、反応関数は利潤最大化条件である「限界収入=限界費用(MR=MC)」から求めることができます。
限界費用(MC)はC1・C2をそれぞれ(X1)・(X2)で微分すればいいのですが、まだ総収入(TR)が分かっていないので、総収入(TR)を微分することで導き出せる限界収入(MR)は今のままでは計算できません。
というわけで総収入(TR)を求めていきます。
総収入(TR)は、「価格(p)× 生産量(q)」 ですが、この価格(p)は、企業が生産量(q)を決めることによって、決まります。
この生産量(q)によって価格(p)が決まる関係は、市場における消費行動を、価格と消費量の関係で表したものである需要関数を変形させて表すことが可能です。
というわけで、需要関数を、「価格(p)= ~ 」の形へ変形します。
q=50-p
↓
p=50-q
そして、この市場には企業1,2しかないので、需要量qは2つの企業の生産量の合計である X1+X2 と等しくなります。つまりq=X1+X2が成立するのでこれを当てはめると
p=50-X1-X2
となります。
これで価格(p)と2つの企業の生産量(X1・X2)の関係を表すことができました。次は企業1,2それぞれの総収入(TR)を求めていきます。
まずは企業1からやっていきます。企業1の総収入(TR1)は価格(p)に企業1の生産量(X1)をかけたものなので、TR1=p(X1)が成立します。
TR1=(50-X1-X2)× X1
TR1=50X1-X1^2-X1X2
というわけで、総収入(TR1)を微分して求められる限界収入(MR1)は下のようになります。
MR1=50-2(X1)ーX2
これを上で述べた利潤最大化条件に当てはめるとMC1=MR1となります。(MC1は C1 をX1で微分したものなので2です)
MR1=MC1
↓
50-2(X1)ーX2=2
↓
2(X1)=48-X2・・・①
同じ計算を企業2でも行うと(全く同じなので計算省略)
2(X2)=45-X1・・・②
となります
①・②を解くと
X1=17、X2=14となります。
これがクールノー均衡における企業1,2の生産量となります。クールノー均衡では、2つの企業の反応関数の交点で、最適な生産量が決まります。ちなみにこの交点をクールノー均衡点といいます。図で表すと下のような感じです。
終わり
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