今回は残余利益モデル(Residual Income Model:RIM)について紹介したいと思います。私は大体外で適当に銘柄探すときに、即興でポジションの目安を立てるときは
来期EPS×PER(過去の数値の大体の平均)
※来期EPSとは、会社四季報のデータを参考にしています⇨会社四季報による業績予想方法
で計算してますが、自宅でじっくりするときはこの方法がいいかなと思っています。残余利益モデルとはざっくりいうと、今までの理論株価の計算式に損益計算書などの財務データを織り込んだもので、DCF法やDDM法よりも当たると、90年代から多くの会計学者が株式界隈に流入したそうです。
まず「残余利益」とは、当期純利益から※株主資本コストを引いたものを指します。ようするに、『株主の期待収益率を上回る利益』といえます。そして残余利益モデルでは、将来における残余利益の割引現在価値と、現在の株主資本簿価を合わせたものを、「企業価値」とします。
※株主資本コスト:株主資本を維持するのに必要な費用のことで、この場合は「配当利回り+期待収益率」を指します。(【株価分析】資本コストとは を参照)
これを日本語で表すと、このように定義されます。
企業価値=株主資本簿価+残余利益(1)/(1+株主資本コスト)+ 残余利益(2)/(1+株主資本コスト)^2・・・+残余利益(t)/(1+株主資本コスト)^t
ちなみにこれは無限等比級数が使ってこのように置き換えることができます。
残余利益モデルによる理論株価=BPS+(ROE-株主資本コスト)/ 株主資本コスト
他の代表的な株価予測モデルである、DDM法(配当割引モデル)は、将来の配当の現在価値を、企業価値としていて、DCF法では、企業が将来稼ぐ予定の将来キャッシュフローの現在価値が企業価値とされます。
これらの株価予測モデルの違いは表現方法の違いというだけで、同じ予測・仮定で計算すれば、企業価値の計算結果は理論上 DCF=DDM=RIMとなります。
じゃあこの3つの計算方法の何が違うのか?というと、現実の株価計算に応用した時のどれだけ一致するかです。
例えば、DDM法(配当割引モデル)は将来の配当を予測しなければいけないのですが、そもそも無配当の企業や配当性向に規則性がない企業については、企業価値の算出が困難になります。ぶっちゃけいうと全く役に立ちません(笑)
次にDCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)では、将来のフリーキャッシュフローを予測します。理論上、企業価値は将来のフリーキャッシュフローの現在価値と捉えるのが、最も純粋な捉え方と言えます。
ですが、簿記でキャッシュフロー計算書などの知識をかじっていると疑問が出てきます。それは会計上の純利益と違い、フリーキャッシュフローというのは、必ずしもマイナスだから悪いという事にはならないということです。
なぜかというと企業が利益を上げるうえで、投資として出費を行うのは必要不可欠だからです。なので、会計上の純利益が常にプラスな企業でも、フリーキャッシュフローがマイナスになったりすることは普通にあります。
これを予測するのは極めて困難であるため、DCF法は専門家やプロが行う難解で最も高度なものという感じです。まあ高度でも現実で使えなければ意味がないですね。
その点残余利益モデル(RIM)は、損益計算書の当期純利益を割り引いた現在価値を算出するため、他の2つと違い、配当性向やフリーキャッシュフローの算出・予測などという作業は必要ないのが素晴らしいです。
加えてDCF法やDDM法と比較して、将来価値への依存度が残余利益モデル(RIM)が最も低く、実証分析の結果、予測の一致率も、残余利益モデルが最も高い事は学術的に指摘されています。つまり、実用面において残余利益モデルは他の2つより優れたモデルといえます。
さらに、残余利益モデルの利点を挙げていくと、利益がマイナスであっても理論株価を算出できる点です。
一般にも広く知られているPER・PBR・ROEは利益がマイナスだと全く使い物なりません。その点残余利益モデルはこれらの上位互換と言えます。
次に具体的な使い方を説明していきたいと思います。
⇨【株価分析】残余利益モデルとは? その2(理論株価 その6)
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