今回は経済学の超基本の部分でIS-LM曲線について説明していきます。
まず前提として、民間消費は国民所得(GDP)の増加関数、民間投資 I は利子率 r の減少関数です。(増加関数・減少関数って何やねんという方は要するに国民所得が増えれば民間消費は増えて、銀行の利子率が上がれば、民間投資は減るという認識で問題ないです。)
ちなみに、なぜ銀行の利子率が上がれば民間投資が減るのかというと、企業は、ある投資プロジェクトの収益率が、利子率よりも高いければ、銀行から融資を受けて投資プロジェクトを実施します。そのため、銀行の利子率が高いほど、実施できる投資プロジェクトは少なくなるので民間投資は減ります。
次に、民間消費と民間投資を、それぞれ C(Y)、 I(r)と表記します。 C(Y)とは、C は Y の関数であるという意味で、同様にI(r)とは、Iは r の関数であるということを意味しています。(y=f(x)が、fはxの関数である(例えば f(x) =3x-2 )と同じです。)
そして、財市場での需要と供給の関係は、「三面等価の法則」から
Y=C(Y)+I(r)+G と表せます。(詳しくは↓のリンクを参照)
これを IS 曲線と言います。 IS曲線は、財市場において総需要と総供給が一致するときのY と rの関係を表しています。
たとえば、
C=20+0.8Y(兆円)、I=50-4r(兆円)
とすればIS 曲線は
Y=(20+0.8Y)+(50-4r)+G
つまり、r=-1/20Y+1/4G+35/2
と変形することができます。
この式において、Y の係数は、-1/20 という負の値であるので、Y の値が高いほど、r の値が低くなります。
したがって、縦軸にr、横軸に Y をとると、IS 曲線は下のグラフのように右下がりとなります。
これは利子率が低いほど民間投資が増えるので、財市場を均衡させる国民所得(GDP) が大きくなることを意味しています。
結論だけ言うと、「IS曲線は、財市場において総需要と総供給が一致するときの総需要(Y) と利子率(r)の関係を表したもの」であると言えます。
次に、LM曲線は貨幣市場での貨幣需要(L)と貨幣供給(M)の均衡を示したものです。
まず貨幣供給とは、マネーサプライ(M1、M2 など)のことを指します。そして、中央銀行は貨幣発行量(マネーサプライ)を変化させることができます。
もし中央銀行が、民間銀行への融資を増やしたり、債券、株式などの購入を増やせば、マネーサプライが増加します。
よって、貨幣需要に対応する貨幣供給は、マネーサプライの金額 M を物価水準 P で割った、実質マネーサプライ M/P となります。
対して貨幣需要とは、※貨幣の取引需要と※資産需要の和で表されます。
取引需要は Y の増加関数であるので L1(Y)と表示し、資産需要は利子率 r の 減少関数であるので L2(r)と表すことができ、 貨幣需要 (L)はL=L1(Y)+L2(r)となります。
※貨幣の取引需要:経済取引のために日頃から必要な貨幣の需要でGDP の大きさに比 例して増加する傾向にあります。
※貨幣の資産需要:資産としての貨幣の需要。利子率が低いほど増加する傾向にあります。
そして、実質マネーサプライ M/P と貨幣需要 L(Y, r)=L1(Y)+L2(r)について、 M/P=L1(Y)+L2(r)…① となる水準で利子率が決まります。
そして定義式は
M/P=L
と表すことができます。
ここで L1=Y/3(兆円)、L2=180-8r(兆円)とすれば、
①に代入すると
M/P=Y/3+(180-8r)となり、これをrで変形すると
r = 1/24Y – 1/8 m/p + 45/2 となります。
この式において、Y の係数は、1/24 という正の値なので、Y の値が高いほど、rの値も高くなります。
なので、縦軸にr、横軸に Y をとると、LM 曲線は下図のように右上がりとなります。
そしてIS曲線とLM曲線の交点では、財市場と貨幣市場の同時均衡が達成されておりこれによって「財政政策」や「金融政策」の効果を分析することができます。
この均衡点を求める問題が俗にいうIS・LM分析で経済学の計算問題によく出てきます。
恐らくここまで読んでもわからない方が大半なのでざっくりいうと、
「IS曲線は、財市場において需要と供給を一致させる 総所得(Y) と利子率(r) の関係を表し、Y=C+I+Gという式で定義されている。」
「LM 曲線は、貨幣市場において需要と供給を一致させる 総所得(Y) と利子率(r) の関係を表し、L=M/Pで定義されている。」
ということだけ抑えてもらえればいいです。
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