前回⇨【株価分析】 ROE(自己資本利益率)の分かりやすい説明
前回はROEの意味と定義式についてざっくり説明しましたが、今回はROEについてさらに踏み込んでいきたいと思います。
まず前回もチラっと触れましたが、ROEの値は高ければ高いほど良いとは単純にはいえません。なぜかというと、計算の分母となる自己資本の値が小さいとROEは高くなるケースが多いからです。
特に過小資本の企業とかが長年の業績悪化で資本が脆弱(債務超過ギリギリ)になり、そこから業績が回復するときなどは、分母が少なく純利益がそこそこ出ているために、ROEが100%超になるといった異常な値となることがあります。
なので、単なるROEの大小では企業を一概に評価することはできません。というわけで、ROEの中身の分析も不可欠になってくるわけです。
そこで出てくるのが今回のテーマであるROEの三分解です。
ROEは売上高を介して次のように分解することができます。
ROE
=当期利益÷自己資本
= (当期利益÷売上高)×(売上高÷総資産)×(総資産÷自己資本)
これは「当期利益率×総資産回転率×財務レバレッジ」であるので、
=「収益性 × 効率性 × 負債の有効利用度」となります。
これをさらに解釈すると、当期利益率 × 総資産回転率 の部分はROA(総資産利益率)そのものなので、「ROE=ROA×財務レバレッジ」と言い表すこともできます。
ROEはその値の高さ・低さが、上で分解した3要素のうちのどこから成るのかを見ることが大切です。
特に同じROEの数値の企業であってもこの3要素に分解することで、それぞれの経営上の特徴を把握することができ、長所短所も見えてきたりと、まさに企業分析ができます。
そして分解した時に、望ましいのは「収益性=売上高当期純利益率」が高いことです。ですが、売上高当期利益率を単独の経営目標にする企業は少ない。というのも当期純利益は年によってマイナスになったり、大きく変化するからです
次に大切なのは「資本の効率性=総資産回転率」です。総資産回転率は製造業なら1が基準と言われていますが、重厚長大型企業では1に遠く及びないですし、逆に商業系企業の場合は2に近い例も多く業種により異なってきます。
そして、ROEの高さが、これらを掛け合わせた「収益性×効率性」=ROA の部分に依存している企業は健全と言えます。実際の企業でいうとキリンビール辺りはこのあたりの数字が優秀です。
最後の「財務レバレッジ=負債の有効利用度」は自己資本比率の逆数であり、それが高いという事はそれだけリスクが高いという事を意味します。
だから財務レバレッジを排除して、結局はROAで見たほうがよいという結論になります。ですが、当期純利益というのは特別利益などが加味されているので正確な企業の能力を表しているかと言われれば、微妙なところがあるので、個人的にはROAの計算をするときは、当期純利益ではなく経常利益を使った方がいいように思います。
※当期純利益と経常利益の違いについては⇨ 決算書における利益の種類
追記:こちらの「ROEって何?」という人のための経営指標の教科書という本が、ROEについて読んでいて分かりやすかったので紹介しておきます。
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