今回は証券投資のリターン(収益)に関する基本事項であるインカムゲイン、キャピタルゲインについて取り上げていきます。
・インカムゲインとは?
一般的にインカムゲイン(income gain)とは、資産運用に際して、ある資産を保有することで安定的・継続的に受け取ることのできる現金収入のことを指します。
銀行預金や債券の受取利息、投資信託の分配金、などがこれに当たり、株式投資の場合は株主が企業から受け取る配当金がインカムゲインとなります。
・キャピタルゲインとは?
一方キャピタルゲイン(capital gain)とは、保有していた資産の値段が変動することによって得られる収益のことを指します。
この場合の資産とは土地、建物、絵画、貴金属など幅広く当てはまり、株式や債券などの有価証券も含まれます。一般的に「価格が変動するものを安く購入して、高くなった時に売却して得られる値上がり益」がキャピタルゲインです。
ですが、高くなると予想して買った資産が、当初の思惑(おもわく)とは反対に値下がりしてしまった場合、そこで売却すると損失(キャピタルロス)が発生します。対してインカムゲインは、安定的・継続的に入ってくる収益です。
株式投資の場合、信用取引を使ってカラ売りを行い、高く売って安く買い戻せば利益を得た場合も、資産の価格変動によってもたらされた利益という意味でキャピタルゲインに該当します。
・株式投資における2つの収入の変遷
日本の株式市場では長い間、キャピタルゲインを狙った投資手法が主流で、配当金を受け取るインカムゲインは脇役的な存在でした。
これはなぜかというと、企業が株主支払う配当金の額が微々たるものだったという事実に関連します。バブル崩壊前の日本企業は、企業同士で株式の持ち合いが慣例となっており、株主から経営者に対して発言する機会が少なく、投資先進国であるアメリカと違い、配当金の支払いを通じて企業の利益を株主に還元するという意識が希薄だったからです。
しかし、バブル崩壊により持合い関係が崩れ、加えて金利がゼロという状況が長く続き、ここ数年は企業の支払う配当金が改めて注目されるようになりました。
またバブル崩壊により株価が長期にわたって値下がりしたことによって、配当金の額を株価で割って示される配当利回り(配当性向)が、株式以外の資産から得られるインカムゲインと同じ水準になったというのも理由と挙げられます。
加えて国内外で買収ファンドが大きく躍進するようになったことも大きいです。ライブドアや村上ファンドといった買収ファンドが巨額の資金力を誇示するようになり、特定の企業の株式を大量に取得して、企業が内部に溜め込んでいる現金を配当として株主に支払うよう迫るケースが増えてきました。
日本企業は買収ファンドに株式を買い占められることを恐れ、景気の拡大による企業収益の好転にも支えられて、以前よりも配当金をより多く還元するようになりました。
このような背景から株式投資はキャピタルゲイン重視の姿勢だけではなく、インカムゲインとのトータルで考えることが重要になってきていると言えます。
というわけで、現在においては株式投資による投資収益は、キャピタルゲインとインカムゲインの合計で考えることが肝心です。これを「トータルリターン」と呼びます。
トータルリターンの考え方と複利による運用方法は、株式投資に限らず資産運用の世界では非常に重要なものです。株と言えば、どれだけ値上がりで儲けたかというキャピタルゲインばかりが注目されがちですが、インカムゲインも大切です。
・余談
となるとインカムゲイン狙いで配当利回りの高い株式を購入していれば安定して勝てると考える人がいるかもしれませんが、ところがどっこいそう一筋縄にはいきません。
結局大塚家具などの顛末を見れば分かりやすいのですが、企業の力に見合っていない高い配当を出しても長続きするはずがなく、いつか利回りを下げざるを得なくなります。
そうすれば株式自体が売られ、今度はキャピタルロスが発生し結局インカムゲイン以上のキャピタルロスが発生するという事態になりかねないのです。
というわけで株式投資する際には、この企業はちゃんとこの配当利回りを維持できるだけの力があるのかを見極めることも大切になってきます。そのための手法としてあるのがファンダメンタル分析です。
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